これまでに、何回か理論株価という言葉を使ってきました。
株式の価値の算定は、証券理論の大きなテーマの一つで、これまで歴史的にいくつかの方法が提唱されてきました。
- 純資産法
「純資産」とは、貸借対照表上の資本金、資本剰余金、利益剰余金を合計したもので、自己資本あるいは株主資本ともよばれます。
企業の発行済み株式数で純資産を割ったものが「一株当たり純資産」で、「一株当たり株主資本」とよばれることもあります。
- 配当割引モデル
株式を長期保有している場合には、毎年その銘柄から配当金収入が得られます。今後その株式から現在の配当金と同じ額の配当金が得られるとみなし、それらの配当金の総額が株式の価値であると考えるのが「配当割引モデル」です。
「配当割引」という言葉は、将来得られるであろう配当金を、金利を考慮して現在の金額に換算する、すなわち割り引くということを意味します。
現在の機関投資家は、このモデルに近い考えで理論株価を算出する場合が多いそうです
理論株価の詳細は証券理論の専門書をご覧いただくとして、ここでは株式投資の際の基準、目安に使える程度の数値を比較的簡単に得る方法を検討しましょう。 |
これまでの説明で、貸借対照表上の「純資産」が株式の価値の基本になっているのがお分かりいただけたと思います。今回は、この純資産の内容について、やや詳しく調べましょう。
前回述べたように、貸借対照表上の「純資産」は次の3つの項目を合計したものです。
- 資本金
会社を経営するにはまず資金が必要ですが、その資金は株主から集めた資金と借入等によるものとがあります。前者の株主から集めた資金を「資本金」と呼びます。これは、自己資本ということもあります。
- 資本剰余金
資本剰余金は、会社設立時の株式の発行、新株の発行(増資)などによる利益をあらわします。
- 利益剰余金
利益剰余金は、会社を運営した結果得られた利益をあらわします。この中から株主への配当を行い、なお利益が残れば「任意積立金」として会社内部に留保します。
使用総資本のうち自己資本の占める比率を、「自己資本比率」といいます。この比率が高いほど借金が少ないので、金利負担が少なく利益があげやすくなります。
会社の経営が好調の期では、財務関係のデータが次のように変化してくるのが普通です。
- 借金が次第に返済されるので、自己資本比率がだんだん高くなります。
- 利益剰余金の増大により配当余力が大きくなるので、増配が行われることが多くなります。
- 利益剰余金が大きく増加した場合には、増配をしてもなお任意積立金が大きくふくらむことがあります。
- 業績好調に力を得た経営者が、設備増強のための増資に踏み切る場合もあります。このときは、増資手取り金により資本剰余金が大きく増加します。
これらデータを毎期チェックすることにより、その会社の経営が本格的に向上してきたのを確認できます。 |
次に、私どもにとってより関心のある個別株の純資産について調べましょう。先に、東証上場株式で業種グループ間でのPBRが大きく異なるのを示しましたが、個別株のPBRはもっと大きくばらついています。
そのもっとも大きな原因は、個別株の純資産が評価の仕方により大きく異なる点にあるようです。
純資産のうち、大きなウェートを占める土地、株式は、貸借対照表では簿価(取得価格)で評価されます。 たとえば、現在から15年以上前のバブル期に工場用地を取得したとすると、土地の簿価は大きいでしょうが、現在の資産価値は簿価の半分以下になっているかもしれません。
株式についても同じことで、バブル期に盛んだった株式持合いによって取得した株式は、現時点では大きく値下がりしていることが考えられます。
しかし、その会社の「純資産」は簿価ベースで評価されるので、貸借対照表上の「純資産」は相当な額として記載されている可能性があります。
逆に、バブル崩壊後の安値で土地や株式を取得した場合には、最近の不動産価格、株式価格の回復でかなりの含み益が発生した可能性がありますが、貸借対照表上の「純資産」は簿価のままの低い数字でとどまります。
このように、企業の「純資産」はかならずしも現在の実質的な財産価値を示すとは限りません。資産のうち土地、株式の占める比率が大きいとされる企業の「純資産」は、慎重にそれらの内容、現在価値を調査する必要があります。
また、製造業の場合には、製造設備、工場建屋、製品在庫などの評価額が純資産のかなりの部分を占める場合があります。純資産とはその企業の解散価値であるといわれることがありますが、その企業が不幸にして倒産した場合には、製造設備、工場建屋などは非常に低く評価されるのが普通だそうです。倒産するような会社の製造設備だから、やむを得ないかもしれません。 業績が振るわない会社の純資産のうち、製造設備、工場建屋、製品在庫などの占める部分は、かなり割り引いて評価する必要がありそうです。 |
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