このページでは、前ページに引き続き、新日鉄株を例にとって株価の長期変動について検討しましょう。下に示したチャートは、前ページに掲載したものと同じ新日鉄株の長期月足チャートです。
前ページで説明した内容から、次のような株式投資の「力学」が見えてきます。
- 株価上昇期
事業会社の業績向上を見て、多数の投資家がその銘柄の株式を購入する。
株価が上昇するにつれ、その銘柄の出来高がますます大きくなる傾向がある。
- 株価がピークをつける時期
その銘柄の出来高は頭打ちからやや減少するが、株価はなお上昇し、ピークをつける。
ピーク時の株価は、その銘柄の20年平均株価の3倍以上になることも多い。
- 株価の崩落期
株式需給関係や外部要因などをきっかけとして、その銘柄の株価が急落する。
その銘柄の出来高がそれまでより激減し、高値で購入した投資家が取り残される。
- 株価の長期低落
投資家のダメージは大きく、以降は相場は上昇のきっかけがつかめなくなる。
相場が少し戻ると、高値で購入した投資家の売りが出てまた下落相場になる。
- 次の株価上昇の始まり
投資家の投げがほぼ終わり、企業業績が底入れしたとき、次の株価上昇が始まる。
安値覚えの投資家が仕掛けた信用売りの買戻しが、株価上昇のきっかけになることが多い。
このような株式投資の「力学」によって10年単位の長期株価変動が発生し、それと需給関係による数年単位の細かい株価変動が重なって、各銘柄の株価が形成されます。
株価が長期低落している時期は、株価がときどき反発しても3年前までの高値を超えることはほとんどありません。この時期には買いからはじめるのは基本的に不利です。
株価の長期低落過程でも、大きく下落した時期をねらって買いを入れるという方法はありますが、下図のチャートを見るとこの方法も決して簡単ではないということがお分かりになるでしょう。
以上から、このような時期は「買い」を仕掛けるのはやめて、「売り」ポジションで長く持続するのがもっとも得策なのです。
一方、相場が上昇基調に入ると株価が3年〜4年ぐらい上げ続けることが多いようです。この時期でもときどき押し目がありますが、その下落幅は小さく短期間のうちにまた上昇基調に戻るのが普通です。従って、この時期は、「売り」を仕掛けるのはやめて「買い」ポジションをとって長く持続するのが基本になります。 |

それでは、ある銘柄の株価が現時点で上昇基調にあるのか、あるいは下落基調にあるのかを知るにはどうしたらよいでしょうか。これには古来さまざまな方法が提案され、テストをされてきましたが、ここではまずもっとも簡単で直感的に理解しやすい株価長期移動平均線を利用する方法について説明します。
上図月足チャートには、株価のローソク足チャートに重ねて3本の曲線が描かれています。赤い線、青い線、グレーの線は、それぞれ株価の12ヶ月(1年)、24ヶ月(2年)、60ヶ月(5年)移動平均線です。
新聞やウェブなどで週足チャートと組み合わせて表示されている移動平均線は通常13週線と26週線ですが、上図月足チャートに描かれているのはそれらよりはるかに平均期間が長期の移動平均線です。
上図月足チャートで、まずグレーの線で示した5年移動平均線と各年の株価との係わり合いを調べましょう。
- 株価低迷期
チャート左端、バブル崩壊後の1990年から今回の相場が始まった2003年までの株価低迷期では、株価は大部分の時期で5年移動平均線より下にあります。
1996年、1997年には一時株価が5年移動平均線を超えましたが、その時期でも株価の5年移動平均線からの上方かい離率は非常に低くわずかに超えただけです。
先に述べたように、株価が長期低落している時期では、株価がときどき反発しても3年前までの高値を超えることはほとんどありません。従って、株価は大部分の時期で5年移動平均線より下で変動することになるのです。
- 株価高騰期
チャート右側、今回の相場が始まった2003年になると、株価は大出来高を伴って5年移動平均線を大きく超えてきました。また、株価は3年来の高値を大きく上回ってきました。このような状態になると、株価の上昇基調が定着し、上昇相場が長く継続するものです。
今回の新日鉄の相場では、その後4年間にわたって株価が高騰し続けました。
新日鉄の株価は2007年7月には1000円近いピークをつけましたが、その時点の株価は5年平均株価の約2.7倍に達していました。
- 株価崩落期
株価が5年平均株価の2倍を超えるピークの時期は、通常それほど長く続くことはありません。上図チャートでは、左側の1990年以降、右側の2007年以降、株価が大きく下落することになりました。 高値圏でこのように歴史的な大出来高が発生した後株価が急落すると、以降はその銘柄の買い手が激減し、株価は回復が困難になります。
上図チャートでは、左側の1990年に株価が5年移動平均線を大きく割り込んだ後は、長期にわたって5年移動平均線が株価の上限になっているのが見られます。
今回の新日鉄の相場でも、2007年に大出来高を伴って株価がピークをつけ、その後2008年に株価が急落して5年移動平均線を大きく割り込んだので、今後少なくとも数年は株価は5年移動平均線を大きく超えることなく推移するのではないかと思われます。
今回は新日鉄株を例として株価の変動と株価の5年移動平均線との係わり合いについて説明しましたが、このような関係は他の銘柄でも多く観察されます。特に、資本金が大きく市場での知名度が高いいわゆる大型株の場合には、たいてい上記と似たような関係があるものです。 |
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