これまで解説したように、株価収益率(PER)は、本来、長期間堅実に成長しその結果毎年一定の割合で増配してゆくという安定成長会社の株価のめどを示すものとして考えられた指標です。
現在日本市場で安定成長株として評価されている花王を例に取りましょう。 この会社の2,006年3月期での株主資本比率は66%もあり、財務内容が優れています。また、この期は総資産7263億円で9700億円の売り上げを達成したので、総資本回転率が133%となります。大変な高効率経営といえましょう。
これらにより毎期安定成長を続けていますが、それを反映して毎期のPERの変動が少なく、会社四季報によれば過去3決算期において実績PERは高い時期平均23.4、低い時期平均19.0と非常に変動幅が小さくなっています。もともとPERは、このような安定成長株を想定して考えられたのです。
それに対して丸三証券の属する証券会社業界では、業績が株式市場の繁閑によって大幅に変動します。丸三証券の場合も、この4年間で赤字転落から空前の好決算まで大きな業績変動を経験しました。このような業種は、PERで株価を判断するのはもともと少々無理があるのです。
証券会社と同じように業績の変動が大きい業種としては、株式市場で中小鉄鋼株とよばれている一群とか、プラスティックなどの量産化学品を製造している会社があげられます。これらの会社は、主として製品市況により業績が大幅に変動することから、通常市況産業と総称されます。 |
このように業績の変動が大きい会社のPERを算出してみると、たいてい前のページに示した丸三証券のPERと同じような推移を示します。
- 業績低迷期
まず、業績が低迷しているときは、純利益が非常に少ないか赤字になることが多いので、PERを算出することもできません。
- 業績底入れの時期
次に業績が最悪期を脱した時期でも、最悪期での業績があまりにもひどかったのを見てきた投資家の信用が得られないので、なかなか株価があがりません。したがって、PERが低いままに放置されます。
- 業績向上期
業績が本格的に向上し始めると、このような業種では今度は目を見張るばかりの利益があがることが多いものです。それを見て投資家がようやく注目してきて、株価は急騰します。 この時期は、来期の大幅増益を見込んで買い進まれるため、PERが全銘柄の平均値より大幅に割高にまで買われることが多くなります。その株価を割高と見て信用で売る向きが多くなるので、この時期は仕手戦がおこり、さらに株価を押し上げるようになります。
- 好決算を発表
そして、次の期の決算が近くなると、その会社が信じられないほどの利益をあげるのが明らかになってきます。その予想利益でPERをはじくと、PERが全銘柄の平均値より大幅に低く見えてきます。そのような新聞記事をみて、アマ投資家が割安と考えていっせいに飛びつきます。
- 株価の上昇ピッチが鈍化
しかし、実際にはこのあたりから株価の上昇ピッチが鈍り始め、天井が近くなるという状態になるのです。それは、結局このような業績の変動が大きい会社では、好業績はそれほど長く続かないためです。これが、長期安定成長株と大きく異なる点です。
- 株価の天井打ち
前のページで解説したように、丸三証券株では株価が3年以上上昇して一時は底値の12倍の2200円以上となりましたが、その過程で好業績は折込み済みとなり、安値で買ったプロ投資家はこの高値をつける過程で利食いにまわったと思われます。業績が不安定な銘柄を低PERを材料として買ったアマ投資家が、結局高値をつかんだことになりました。
株式市場では、業績が安定して成長する銘柄はそう多くありません。したがって、丸三証券株と同じようなPERの推移を示す銘柄が大多数なのです。PERは簡単に算出できて株価のある程度の目安となる便利な指標ですが、このページで解説したような傾向があるので、それを頭に入れて利用してください。
|
|
 |
|
|
|
|