エルミタージュ美術館は、冬宮と他の4つの建物が回廊で結ばれた構造になっています。冬宮は歴代ロシア皇帝の正規の住まいで、エカテリナ2世のときに完成しました。
絶対権力を手に入れたエカテリナ2世は、ヨーロッパ各国の優れた芸術品を大量に購入しました。それらを収納するためにつくられたのが、現在小エルミタージュと呼ばれている離宮で、これがエルミタージュ美術館の基となりました。 |
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エルミタージュ美術館の入口は、南西側の宮殿広場に面しています。私どもは、開館時間より20分ほど早くから並んでいましたが、恐れたほどの混雑はなく、開館時間の少し後に入館できました。
チケットを買って内部に入ると、目の前から巨大な大理石の階段が伸びているのが見えました。この階段は、昔皇帝に謁見にきた各国の大使が登ったということで、「大使の階段」と呼ばれます。 |
階段の吹き抜け部分の高さは22メートルもあるそうです。階段のまわりは、豪華な金細工で装飾されています。 現在のエルミタージュ美術館は、大小5つの建物に多数の展示品が置かれた複雑な構成となっており、一通り見るにも数日かかるといわれます。 私どもは、時間の関係で、西欧諸国の絵画に絞って鑑賞することにしました。ガイドブックを手に、まずこれから混雑してくるのが予想されるレオナルド・ダ・ビンチの作品2点が置かれている部屋をめざします。 |
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エルミタージュにあるダ・ビンチの作品は、《リッタの聖母》と《ベヌアの聖母》の2点です。両方とも、もともと題名がなく、購入した貴族などの名前で呼ばれているそうです。
大天才ダ・ビンチが残した絵画作品はわずか20点といわれ、しかも未完成の作品がかなりあるとされます。それらのうち、2点がこのエルミタージュ美術館にあるわけです。
左は、それらのうち《リッタの聖母》と呼ばれる作品です。かなり小さな聖母子像でしたが、1490年ごろ、ダ・ビンチ40歳前後の傑作です。聖母の衣服の赤と青が印象的です。背景のアーチ窓からみえる遠景は、後のモナリザの背景を連想させます。
この作品にも、ルーブル美術館のモナリザと同様、厚いガラスカバーがついていました。 |
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ガラスカバーに顔を近づけてみたところ、絵画の保存状態はルーブル美術館の《モナリザ》よりははるかによいように思われました。 |
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ダ・ビンチと同じ部屋に、ラファエロの《コネスタビレの聖母》がありました。やはり小品でしたが、さすがに聖母子像の名品の多いラファエロの作品で、聖母の優美な表情、全体の構図の巧みさなど実に見事です。
聖母の衣服の赤と青が、上記ダ・ビンチの作品とよく似ているのに気がつきました。背景に遠い山並みを描いているのも、同じです。当時の聖母子像は、このように描くのが普通だったのでしょうか。あるいは尊敬する大先輩ダ・ビンチの手法を取り入れたのでしょうか。
この作品は20歳のときに描いたものです。 |
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このような天才画家がわずか37歳で早世したのを、心底から残念に思います。 |
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エルミタージュ美術館は、ルーベンス、レンブラントなどネーデルランド、フランドルの画家の作品を特に多く所蔵しているので有名です。エカテリナ二世が、それらの作品を好んだためと思われます。
ルーベンスの部屋に入ってぐるりと見回したとき、ルーベンスの傑作が壁をうずめる中、ひときわ輝きを放つ作品がありました。ローマ史の中にある「シモンとペロ」というストーリーを描いたものです。シモンは捕えられて処刑を待つ身でしたが、まったく食事をあたえられなかったので餓死寸前でした。面会に来た娘ペロは子供を出産したばかりで乳が出たので、父親に乳を含ませ、父の命をかろうじて救いました。
ルーベンスは、このドラマティックなストーリーに感銘を受けて数点の作品を描いたようで、オランダのアムステルダム美術館にもすばらしい作品があります。エルミタージュ美術館のこの作品もまた目がくらむばかりの画力に満ちており、私はこの作品の前に立ったまましばらく動くことができませんでした。 |

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エルミタージュ美術館のレンブラントの所蔵は、オランダ以外では最大ではないかと思います。自画像などもたくさん展示されていました。残念なことに展示室の照明がよくないので、外の天気が悪かったこともあり、レンブラントの暗い絵はあまりよく見えませんでした。
下左は、レンブラントの作品の中でも特に有名な 《放蕩息子の帰還》 です。ルカの福音書にあるストーリーで、父親から分け与えられた財産を放蕩で使い尽くしどうすることもできなくなって父のもとに帰ってきた次男を、父は、走り寄って抱きしめ、接吻してやります。
画面の奥のほうで、お母さんがそっと事の成り行きをのぞいているのが印象的です。父親が、放蕩息子をたたき出すのではないかと心配しているのでしょう。
下右は、 《紅い服を着た老人》 という作品です。レンブラントは優れた肖像画をたくさん残していますが、なかでも長い星霜を生きてきて複雑な表情をもつ老人の肖像画には特別優れた技量を発揮しました。この作品は、それらの代表格といえるのではないかと思います。 |
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世界のほかの大美術館では、ルーブルでも、プラドでも、アメリカのメトロポリタンでも、印象派以降の作品は展示されていません。近代、現代の美術作品を展示する専門の美術館が、別にあるのが普通です。
しかし、エルミタージュ美術館では、近代美術、現代美術も展示されています。そのために、ただでさえ巨大な美術館がさらに大きくなっているのです。
この美術館では、印象派以降の作品も非常に充実しています。特に、ゴーギャンの作品が多いのが目に付きました。 極北の地サンクトペテルブルグで、熱帯のタヒチを描いた絵画が美術館の関係者をひきつけたのでしょうか。 |
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ガイドブックをたよりに方々の展示室を訪ねますが、美術館のつくりが複雑で、つい見落とすことがたびたびでした。そのたびに展示室にいる学芸員に訊ねましたが、英語はほとんど通用しませんでした。 |