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  曼珠沙華・中村汀女


曼珠沙華・中村汀女

 中村汀女は、俳句を現代の女性の間にこれだけ普及させた功労者の筆頭といえましょう。汀女の句は、以下の作品に見られるように、女性らしい繊細で気品のある表現と暖かい叙情性に特色があります。それにより、新聞やテレビの俳句欄で多くの女性ファンをひき付けてきたのです。

汀女は、明治33年(1900年)に熊本に生まれました。熊本高女に進学して、次の曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の俳句を詠みました。

     曼珠沙華 
         抱くほど採れど
             母恋し     中村汀女

汀女さんもまだうら若き乙女で、ホームシックに悩んだようですね。

その後、熊本高女を卒業してまもなく、エリート官僚だった男性と結婚し、東京・世田谷の代田橋に住むようになりました。汀女さんはなかなかの発展家だったので、案じた親が早く結婚させたという話を聞いたことがあります。
次の俳句は、汀女さんが世田谷に住み中年になったころの作品と思われます。

     年ごろの似て 
         かえりみて
             曼珠沙華    中村汀女

秋の彼岸にお墓参りをしたときのことでしょうか、すれちがった女性が自分とほぼ同年配であるのに気がついて思わず振り返ったところ、その女性の向こうに曼珠沙華(まんじゅしゃげ)が鮮やかに咲いているのが見えた、という句意です。

女性は同性を観察するといいますが、そういう女性ならではの俳句で、男性ではこういう発想すらすることができません。句尾に付け加えた「曼珠沙華」は、女性の情念を感じさせる鮮やかさに満ちています。




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